酷白 -kokuhaku-

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 琴也(ことや)が堪え切れずに詰襟に手をかけると、鈴真(すずま)は文字通り鈴のような声を上げた。  恐怖ではない。劣情だ。鈴真の被虐的な視線の奥に仄暗い劣情を見出したのは、わんわんと蝉が鳴き喚く、暑い夏の夜だった。  あの日偶然目にした光景を琴也は今でも忘れることができない。ただひとりの幼馴染の知らない一面が目蓋の裏に焼き付いて離れないのだ。 「琴也、僕をきつく縛って……っ」  自ら学生服を脱ぎ去った鈴真はうつ伏せになりながら琴也に言った。  鈴真の背には目を背けたくなるような痛々しい傷痕が残っている。煙草を押しつけられたような焼き痕や、何度も爪を立てられたような引っ掻き痕。  これらはすべて鈴真が自らつけたものだ。
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