酷白 -kokuhaku-

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     ◇  あの夏の夜。当時十六歳の琴也は二歳年下の幼馴染である鈴真の自宅を訪ねた。  鈴真の祖父は地元でも名のある実業家であり、彼の自宅は誰が見ても一目で裕福な家庭だとわかる造りをしていた。  家同士が近くであったため、琴也は幼少時から自然と鈴真と遊んでいた。物心ついた頃から琴也にとって鈴真は自分の弟のような存在であり、唯一無二の友人であった。  ふたりの関係は小学校に上がっても、中学校に上がっても持続していたが、琴也にはひとつ懸念があった。それは鈴真から発せられる視線である。  思春期を迎え周囲が色気づき始めた頃。当然琴也も意中の相手ができ、彼女を振り向かせようと馬鹿らしい努力をしていた頃。鈴真から発せられる視線が熱を帯び始めたのだ。  鈴真は幼い頃から少女のような可憐な容姿をしていたが、中学校に上がってもなお女生徒によく間違えられていた。声変わりも遅かった。一度も陽に当たったことがないかのように病的な蒼白い肌に映える真っ赤な唇が魅力的だった。  容姿も家柄も良い鈴真は当然注目の的だったが、そのほとんどが彼に取り入ろうとする不届き者ばかりであった。女々しいという理由でいじめの標的にもなった。  鈴真は常に孤独だったが、琴也の隣にいるときは、常に笑っていた。
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