薔薇の茶会

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「確かに、ブリタニアは非常に女権の強い国家ではありますね」  ホッジャ首相は弛んだ両の頬に追従じみた笑いを浮かべると、緋色の薔薇の紋章が入ったカップをまた口に運ぶ。  ブリタニア帝国。今や世界に更なる覇権を拡大しつつある大国だ。 ――帝国万歳! 女帝陛下万歳!  半月前にテレビで目にしたアメリカ再併合の記念式典の光景が蘇る。 ――長らく分断にあったアメリカの本土回帰を心より歓迎します。  銀髪に海色の瞳をした、どこかおとぎ話の「雪の女王」を思わせる姿をした女帝は、そこだけは不思議と老いを感じさせない絹じみた柔らかな声で語った。 ――私たちは永らく捩れた関係にありました。  半世紀前までは植民地が次々独立し、“陽の沈む帝国”“栄えある孤島”と揶揄されたブリタニア。  弱冠二十歳で即位したヴィクトリア二世は逆境の中から祖国をその名に相応しい“勝利(ヴィクトリー)の帝国”に返り咲かせた。
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