薔薇の茶会

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――しかし、家族は対立することはあっても互いを思う気持ちがあればこうしてまた歩み寄ることが出来るのです。  アメリカ合衆国大統領からブリタニア帝国領アメリカ総督に肩書きを変えたナオミ・ジャクソンはミルクチョコレートじみた薄褐色の面にどこか凍った表情を浮かべて女帝のスピーチを聴いていた。  黒人と白人の血が相半ばする彼女が統治する領内では再独立を求める蜂起が早くも頻発しているのだ。  彼女本人の中でも「再併合」という名の祖国の「再植民地化」が喜ぶべき話であるわけがない。 ――私たちは共に歩んでいく家族です。  ヴィクトリア二世のスピーチが終わった後に流れたブリタニア国歌の演奏。  誇らしげに口を開けて歌うのはブリタニア側の人間ばかりで、アメリカ側はまるで葬列のように固く口を閉ざした面持ちが目についた。
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