薔薇の茶会

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「総理、そろそろお時間です」  三十半ばの高過ぎも安過ぎもしないスーツにきっちり髪を纏めた男が静かに入ってきて穏やかな笑顔で声を掛けた。  秘書とかSPとか正確な肩書きは不明だが、ホッジャ首相のような立場になれば常日頃からこんなおとぎ話に出てくる執事みたいなよく訓練された人たちに仕えられるのだ。  独裁者も一転して柔和な笑顔で述べる。 「それでは、皆さん、楽しいお茶会に招いていただき、本当にありがとうございました」  初老の総理が一礼して立ち上がると、身に付けたポマードやコロンの混ざった匂いがこちらにまでツンと鼻についた。 「お先に失礼します」  二人の男が出ていった後には、醒めたカップの茶に口も着けずに座した三人の若い女が残った。
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