薔薇の茶会

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「一番辛いのはノンカだよ」  流浪の王女は鏡でも覗くように開いた自らの両の掌を眺める。 「自分の希望でもない時に玉座に就かされて、辛くても降りることはもう許されない」  父親の先王が癌で余命半年と宣告され、叔父の大公はその以前から病気の後遺症で公務はおろか普段の生活もままならない、従弟の王子はまだ小学生でさすがに王位に就かせるには幼すぎる。  そこで「王位継承権は男子のみ」とされてきた憲法は急遽改正され、先王崩御に伴って十九歳のノンカが即位する運びになった。 「それまで散々『お前は女だから伝統ある王室の跡は継げない、年頃になったら然るべき相手と結婚して王家を出ろ』とあの子も周りに言われてきたのに」  空の掌を見詰めながらナディアは寂しく笑った。  ワラキアの王室も継承権は男子のみで数年間にナディアの父王が亡命の身のまま亡くなった際には「ワラキア最後の国王死去」と報じられたのを思い出す。 「女というだけで無用にされたかと思えば、今度は男の後始末を押し付けられる」
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