薔薇の茶会

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「ちょっと、建国庭園(けんこくていえん)方面は通行止めになっているので迂回しますが、マリアさんはお時間、大丈夫ですか?」  不意に運転席から声が飛んだ。 「あ、私は大丈夫です」  母さんは今日も遅いはずだと思い出しつつ、何とはなしに貰った箱包みを胸に抱き締める。 ――よろしければお宅でご家族と召し上がって下さい。  宮殿を辞す際に中年の女官らしい人から品の良い笑顔と声で告げられ渡された。  重さからして恐らくはお菓子の類いだろう。今日、お茶会の席で出されたのと同じ国花を象ったクッキーだろうか?  動かしても物音一つ立てない箱の中身はまだ窺い知れない。
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