薔薇の茶会

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「この国の男性たちは、女性に対して敬意が無さ過ぎる」  ナディアは中性的な低い声で述べると、首を静かに横に振る。  そんな風に動作が加わると、断髪の軍服姿であるにも関わらず、むしろ、それ故に、鴉の羽じみた艶のある黒髪や華奢な肩から不思議と女らしさが浮かび上がった。 「女と見ればすぐ、美人だ、ブスだ、若い、もう(ばあ)さんだと大騒ぎ」  辛辣に語るこの「男装の亡命王女」にはトランス男性とかレズビアンとかはたまた両性愛者(バイセクシャル)とか様々な風評がある。  だが、実際に間近に眺めると、高貴な身分からも若く美しい女性の体からも自由になろうとして、却って両方に縛り付けられている痛々しさをいつも覚えるのだ。
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