薔薇の茶会

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 ホッジャ首相は気を取り直した風に咳払いすると、白けた顔つきでクッキーを齧り始めたナディアに語り始めた。 「太后陛下やマリアさんのお母様のように艱難(かんなん)に耐え忍ぶのが我がトラキアの女性の伝統的な美徳でありまして」  この人、何にも分かってない。いや、端から分かろうとする気がないのだ。  傍で眺めている私の中にもサーッと暗い穴が口を開く。  この独裁者は最初から自分の中で決めてある結論を通すことしか選択肢がないのだ。  民草から寄せられるどんな苦言も現実もその結論に沿う形でしか彼には採用されない。 「そういうおためごかしでこの国の女性たちもずっと口を塞がれてきたんですよ」  豪奢な王宮の壁を背景に浮かび上がる亡命の王女の横顔は寂しい。
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