薔薇の茶会

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薔薇の茶会

「皆さん、楽になさって」  馥郁としたローズティーの香りが漂う中、シンプルだが一見して質の良いベージュのワンピースに輝く栗色の髪を垂らしたノンカは私たちに穏やかに微笑んだ。 「今日はお茶を飲みながらざっくばらんにお話しましょう」  いよいよ大変な所に来た。  私は腰掛けた深紅のビロード張りのソファの上で縮こまる。  そうすると、新調したばかりのスーツのジャケットの背中がいっそうきつく感じた。  足元に目を落とすと、フカフカした緋色の絨緞に載った自分の黒いエナメルの靴がいかにも安っぽく粗雑に映った。  母さんがわざわざ買い揃えてくれたスーツも靴も高級ブランドではないが、一般には決して安物ではない。  しかし、この「薔薇の宮殿」で若き女王と首相と隣国の亡命王女と同じテーブルを囲む状況においてはいかにも貧賎の身なりに思えた。  実際、特待生として女王と同じ大学に入学したというだけで、私はこの国の平均よりやや貧しい母子家庭の庶民に過ぎない。
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