優しい彼

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★★★ なんとなく、おろおろしっぱなしだった。 初めて課長から夕飯に誘われたので仕方なくついて歩いていく。 本当は早く帰りたかったが、もはや断りにくい状況だ。 先を歩いていた課長がもたもた着いてくる私を疎ましそうに振り返るので、そのたびに課長に走り寄る。 それを繰り返しながら私は課長の少し斜め後ろを歩いた。 連れてきてもらったのは、落ち着いた和の雰囲気ある和食料理店だった。 課長と広めのテーブル席に向かい合って座る。 良く冷えた二つのグラスにビールを注ごうとビール瓶を持ち上げる課長。慌てて手を伸ばした。 「私がやります」 「いい。俺がやるから」 課長はビールを注いだグラスを私に差し出した。 「お疲れ様」 「お疲れ様です」 ふたりで、グラスを合わせてからビールを一口飲んだ。 「遅くまで有難う。それと、今日は怒り  過ぎたよ。反省してるんだ」 「え?」 グラスを持ったまま課長を見て固まる。 「みんなの手前もあるし。まあ、怒りたくなくても目立ったヒイキはできないし」 「ひいき?」    呆気に取られたようにグラスを    持ったまま動かずに課長を見つめた。 何かをふっきるかのようにグラスのビールを一気に空ける課長。
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