モーニン・ガール!モーニン・ボーイ!

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――そうよ。立って歩くために足が、何かを掴むために手が、叶えるために魔法が……それらを上手に扱うために、考える頭があるんだわ。  狭くて暗い地下のシェルターに、ミア達はぎゅうづめに押し込められ一ヶ月あまりを過ごすこととなった。多くの人がストレスから喧嘩し、夜中であっても誰かの罵声が聞こえない時はなかった。食料も少なく、プライバシーも何もなく、会いたい人を探しに行くことさえできない日々。それが、ミアが気付かずにいた、テロリストに襲われて突然戦禍に巻き込まれた人々の現実であったのである。  一ヶ月後、地上に出た時。町はボロボロになり、作物は荒らされ、酷い有様になっていた。テロリスト達はどうにか政府が捕まえて、戦いを収束させることには成功していたものの。その代償は、あまりにも大きなものであったのである。  アンソニーの行方は、ようとして知れなかった。どこか別のシェルターに逃げたらしい、ということしか分かっていない。今すぐにでも彼を探したい、そう思った。けれど。 ――アンソニーに、胸を張ってもう一度会いたいなら……きっと私には、もっと先にするべきことがあるはずよ。  あの高層マンションで、毎日のように窓越しに向かい合って挨拶をする日々。少し遠回りでも望めばカンタンに会うことができて、狭い大地を思い切り駆け回ることもお互いの部屋でゲームをすることも自由にできた日々。  今なら、母が言いたかった言葉がわかる。それがどれほど尊い幸せであったことか。自分が、その幸せに気付くこともできず、不満ばかりを数えて過ごしていたということが。  どんな日々にも、喜びはある。  それでも悪いことや、気に食わないことばかりを数えて息をしてしまったら。きっと自分達は、己の人生を豊かにしてくれるはずの数多くのことを見逃してしまうことになるのだろう。  それはなんて、なんて悲しく淋しい一生であることか。 ――取り戻すの。今度は、誰かに頼るんじゃない……私自身の力で。  ミアは、必至で勉強に励むようになる。  願うことはただ一つ。あの日気づかなかった大切なことを、そしてあの尊い日々と故郷を取り戻すことだ。
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