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マンションのある地区の、汚染物質や毒の煙を除去するまでに三年。
さらに荒れ放題になり、老朽化で傾きつつあったそれぞれの建物全ての補強工事を完成させるまでに十年。
そして、すべての家の内装リフォームを完成させ、再び人々が住める環境を取り戻すまで、さらに二年がかかってしまった。少女だったミアが魔法建築の勉強を必至にして、名門学校に進学し、資格を取り――それだけの仕事を全てこなし。その時にはもう、アンソニーと別れてから十五年もの月日が経過していたのである。
アンソニーは、あの日逃げる途中で怪我をしたせいで、片足が不自由になってしまっていた。それでも彼はまたあの懐かしいマンションに帰ることを強く希望しており、魔法治療学科に進学して一生懸命日々を生きていたのである。
彼を見つけ、それらの話を聞いたミアが最初に言った言葉はこれだった。
「じゃあ、アンソニー。あのマンションに、車椅子でも広々と使えて、目の見えない人でもわかるように音声ガイドがきちんと完備されていて……いろんな人が使いやすい仕組みを整えないといけないわね。ユニバーサルデザインなリフォームを考え直さないといけないわ。だから、あと少しだけ待っていてくれる?」
戦争や事故で体が不自由になった人であっても、快適に使うことのできるマンションを。
懐かしいだけではなく、みんなが笑顔になれる故郷の再建を。
それらの理論を組み上げ、実装するまで――さらに、二年。
「あとね。……全部が終わって、もう一度みんなであの部屋に帰ることができたら。どうしてもやりたいことがあるのよ、私。付き合ってくれない、アンソニー?」
十三歳の少女だったミアは今、三十歳。
名の知れた魔法建築家として、立派な大人になった。
こんな自分をここまで守り、育て、時に叱咤してくれた両親を心の底から誇りに思っている。彼らがいたからこそ、ミアはこうしてあるべき場所に戻ってくることができたのだから。
けたたましくなる目覚まし時計を止め、ベッドでうーんと伸びをする。そのまま、着替えるよりも先に窓を思い切り開くのだ。思わず泣き出しそうになるのを、一生懸命笑顔で隠して。
「ソニー!アンソニー!」
そしてミアは叫んだ。
「おはよう!最高の朝ね!」
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