Epilogue

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「それでも、わたし……大阪へは行かないわ」 麻琴はきっぱりと言い切った。 「やっぱり、ずっと製品(プロダクト)デザインも続けていきたいもの」 確かに、守永さんの下について管理職のスキルを上げるのが、まだまだ女子社員で「上」を目指す人が少ないこの会社では最短ルートかもしれない。 だが、そのために入社以来スキルを重ねてきたデザインの仕事を手放すのは……やはり、惜しかった。 「それに、せっかく東京(本社)でチームリーダーになれたのに、半年後に転勤してその役目を放り出すわけにはいかないわ」 チームメンバーの上林(かんばやし)や紗英もいるし、立ち上げたばかりの商品企画だってあるのだ。 元カレの芝田の手も借りた、新進気鋭のクリエイターたちのアート作品と麻琴がデザインするフレームのコラボレーションは、「MINA」という商品名でのシリーズ展開を目指して試行錯誤している真っ最中だ。まだまだ紆余曲折が予想される。 「mina(ミンナ)」とはスウェーデン語で「わたしのもの」という意味であるが、日本語の「みんな」にも掛けている。 簡単に中身とフレームをその人それぞれに自由に組み合わせることができるからこそ…… いろんな人たち(みんな)に手に取ってもらって、身近な生活空間でアートを感じてほしい、という願いを込めたのだ。
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