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「あ、あのね、恭介さん」
麻琴は恭介の膝の上で抱えられたまま、彼を見下ろした。
「大阪へ転勤する話、なんだけど……」
恭介はその指でやさしく麻琴の頬に触れながら、彼女を見上げた。
「本当にどちらでもいいんだよ?どっちにしたって、僕がきみの傍にいることには変わりないんだから。それに、東京から離れた方がめんどくさい『松波』の親戚連中と距離も置けるしね。
……あ、うちの両親や妹は大丈夫だよ。
早くきみを連れてこいってうるさいくらいだ。
先に麻琴のご実家に伺うつもりだけどね」
……そうだった。「結婚」は当人同士だけの問題じゃなかったんだった。
だからといって、もう後戻りする気はさらさらないけれども。
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