廃屋に鎮座せしモノ 1

11/11
前へ
/422ページ
次へ
「えーとね、だいたいの場所なら分かるよ。それに小柴さんにLINEで訊くっていう手もあるけどね……」 「じゃあ行こうよ。今夜はそんなに蒸し暑くないからさ、ドライブがてら行ってみようよ」  留依が語気を強めて正孝を見据えた。 「……あれ、もしかして正孝さん、怖いわけじゃあないよね?」 「おいおい、まさか怖いわけないだろう。たださ、明日は午前中からバイトが入ってるからさ……そのあんまり、夜遅くまで遊ぶのはどうかなって」  留依に挑発された正孝は少しむきになってそう云い放った。 「あら、私だって明日はライブなんだからね。でもいいじゃん、とにかく廃屋に着いたら、ちょっとだけ中を覗いてすぐに帰ってくればいいんだからさ」  留依の言葉に隆が同調し、続いて鏡花が賛同した。 「あーあ、おまえたち本当にお子様だな……。なんでそんな都市伝説を簡単に信じちゃうんだよ」 「なに言ってんのよ、小柴さんの話をふったのは正孝でしょう?」  正孝は露骨に嫌がったが、ほかの3人は山へのドライブぐらいに軽く考えていた。 「じゃあ、いいけどさー。でも留依は今、重要なときなんだからさ、みんなはしゃいで無茶するんじゃないぞ」  正孝のその言葉に鏡花と留依が小躍りした。  そうして正孝と隆、鏡花と留依は東京都の西側を目指すことになった。
/422ページ

最初のコメントを投稿しよう!

370人が本棚に入れています
本棚に追加