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「留依、頑張りな。どうせ幽霊なんてこの世にいないんだからさ。みんないい加減な噂をただ楽しみたいだけなのよ。大丈夫、大丈夫」
そう気丈に励ました鏡花ですら、この漆黒の闇に呑み込まれそうだった。
「ああ、実は俺も幽霊なんて信じてないんだ。まあ、人が死んだらどうなるかなんて真剣に考えたことはないけどさ、きっとなんにもない世界に行くっていうか、たんにこの世から消えてなくなるだけだろう」
一番後ろを進む隆は、そう云うとすぐ前を歩く留依の背中をポンと叩いた。
「……う、うん。そうだよね。だって私も霊なんて見たことないしさ……。見たことのないものを信じるなんて難しいよね」
留依は隆の励ましに感謝した。
小道を登り切った4人はやがて藪の中に佇む不気味な廃屋の前に辿り着いた。正孝が懐中電灯で廃屋を照らす。
「あっちゃー、こりゃ出るぜ」
正孝はそう云うと舌を出した。
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