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廃屋は朽ち果てた平屋建ての木造家屋だった。まず最初に注目したのは玄関の右側にある窓ガラスだった。恐らくキッチンの窓なのだろう。窓の上部に換気扇が取り付けられている。割れた窓ガラスの向こう側に洗剤や食器類が散在しているが見えた。明らかに人が生活していた痕跡がある。
「正孝、これが問題の廃屋なの?」鏡花が尋ねた。
「ああ、間違いないね。ここだよ。怪談サイトにあった廃屋の写真は、昼間に撮った写真だったんだけど、まさにこんな感じの平屋建てのボロボロの家だったよ」
「そうなんだ。よし、じゃあ目的達成ね。もう帰ろうよ」
留依がすがるように云った。
「ああ、そうだな。こんなボロボロの家じゃあ、なかに入るのは危険、っていうか無理だろうしね……」
正孝が応えた。
「大筋賛成。たださ、あの割れた窓ガラスから家の中を少しだけ覗いて帰ろうぜ。さすがに外観だけ見て終わりっていうのも、なんだか味気ないしさ」
隆の提案に留依は露骨な嫌悪感を示した。
「なんでよー、もういいじゃん。私もう帰りたいよ」
「まあまあ、そう云うなって留依。別に留依になかを覗けっていうわけじゃないよ。俺が見てくるよ。正孝、懐中電灯貸してくんない?」
「隆、もうやめようぜ。留依が怖がってるじゃん」
正孝は隆に懐中電灯を手渡すことを拒否した。
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