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「よし、じゃあまた俺が先頭になるから、みんな着いてきて。帰りもゆっくり下っていくからね……」
正孝がそう云った刹那、ギィィィィィィィ!
という歪な摩擦音とともに4人の斜め前方にある廃屋の玄関の扉が勝手に開いた。
「えっ、なに!」
逸早く反応した鏡花が恐怖のために硬直した。
「えっ、えっ、なんで」
隆が動転している。
「あっ、ああ、なんで勝手に……」
正孝が襲来する怖気に支配された。
留依は引きつった全身の筋肉を意識する暇もなく、ただただ思考停止したまま立ち尽くしていた。4人はいま何が起こっているのか、まったく理解できなかった。唐突な出来事にまさに呆気にとられていた。
「……ちょ、ちょっとヤバいかも……」
隆が駆け出したい思いを必死に抑制し、そう呟いた。そうだ、これはたんなる風の悪戯に違いない、落ち着け、隆はその言葉を急速に心の中で反芻していた。
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