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もしも勝手に開いた扉から青白い手がニュルっと出てきて4人を手招きしたとしたら、全員脱兎のごとく駆け出したに違いない。だが扉の奥から予期せぬものが飛び出してくることはなかった。4人は固唾を呑み、その場で硬直していた。
「こんなポロボロの家だからさあ、もういろんなところにガタがきてんだよ。多分、玄関の扉の周囲が歪んじゃってて、風が吹くと勝手に開くんだよ。ただそれだけのことだよ」
正孝がみんなを安心させるために気丈にそう発言した。
「……だよね? 歪んだドアが、ちょっとした風で開いちゃっただけだよね……」
鏡花はまるで自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
「よし、いずれにしても撤収しよう。正孝いこうぜ」
隆が幾分、明るくそう促した。
「ああ、そうだな。よし、みんな行くぜ……」
正孝がそう云ったとき、急に留依の躰がビクンと痙攣した。
彼女はバランスを崩し、そのままその場にしゃがみ込んでしまった。
「留依! ど、どうしたの?」
驚いた鏡花が、すかさず留依の横にしゃがみ込んだ。
「留依、大丈夫か?」
「どうした留依? 立ち眩みか?」
正孝と隆が口々に留依に問いかける。
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