追跡者S 2

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追跡者S 2

「へえ、それで伊達さん、元気ないんだ?」     青い髪の女が凛香に問いかけた。 「そうなの。本人にとっては相当こたえたみたいなの。大好きだった、るいるいが失神しちゃったこともそうだし、なによりもパパが撮ったヘンテコな写真のおかげで、なんだかとても落ちこんじゃってるの……」 「ふーん、でもさあ、あの伊達さんが落ちこむなんてホント珍しいよね。ライブ帰りの日は、いつもならずっと踊りながら仕事してるからさあ」  ここは高円寺にあるバー、Coph Niaである。Coph Niaという一風変わった名をもつこの店の経営者は、驚異の怪奇写真を撮り、現在、塞ぎこんでいる伊達文哉本その人である。     青い髪の壮麗、かつワイルドな美しい女性は周囲からジェディと呼ばれている。彼女はウェーブのかかった青い長髪を後ろで束ね、バーカウンターのなかで野菜を細切りにしていた。ジェディはCoph Niaの看板バーテンダーであり、高円寺界隈では有名な存在だった。  ひとつにはその美しさにおいて。そしてさらには洗練されたロック・ファッションを身にまとうカリスマ・パフォーマーとして。 「……それで凛ちゃん、その美少女Xは、本当にそのお店のなかにいたの?」
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