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「……ああ、うん。いいよ。でもさあ、結構、急な上りみたいだからさ、慎重に進んでいくよ。とにかく安全第一だからね」
「もちろんよ。とにかくゆっくり行きましょう。留依、手をかしな、姉ちゃんが手つないであげるから。あんたどんくさいから、ずっこけないでね」
鏡花が妹を気遣った。思い返せば、それがつねに姉妹の立ち位置だった。アクティブで物怖じしない鏡花は留依の保護者であり、敵からの防御柵だった。大人しい留依を虐めようとする男子たちは、もれなく鏡花によって撃退された。そんな姉を留依はいつも心強く感じていた。まさに自慢の姉だった。
「……うん、ありがとう、お姉ちゃん……」
留依は右手を鏡花に差し出した。
「よし、それじゃあ行こうか……」
正孝が懐中電灯をかざしながら傾斜のある小道を登り始めた。
一同は黙りこくったまま一列になり、小道に足を踏み入れた。
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