神秘なる山麓を超えて 1

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 撮影された写真を見たとき、脳内に衝撃が走った。  留依の右肩のあたりで見知らぬ少女が薄ら笑いを浮かべていたのだ。なにこれ! 留依の吃驚(きっきょう)は悲鳴となって(ほとばし)った。そして留依は強く感じた。――私は前にこの子と会ったことがある――。  でもどこで? その問いに対する答えは留依の頭の中にはなかった。分からない。でもこの子は確かに私にんだ。留依は、その突飛な事実を肯定した。間違いない。確かにそう感じる。  週が明けても相変わらず体調は芳しくなかった。やっぱり躰がダルい。頭もボーっとする。まるで、誰かに常時、エネルギーを吸い取られているみたいだ。留依はますます憂鬱になった。  自分の身に起こった怪異の時系列を思い返した留依は、大きく伸びをした。今夜は眠れるのだろうか? 漠とした不安が常に留依の心に纏わりついて離れない。  そして留依は再び、眼を閉じた。とりあえず寝たフリから始めてみよう。そう、そうすれば本当に眠れるかも知れない。
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