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留依は、ますます動悸が早くなった。急激な展開に頭がついていかない。
「蛍……あなたには忠告したはずよ。私のやることに干渉しないで」
「冴蘭、突然他人の家を訪れるのはやめなさい。とにかくびっくりし過ぎて怖いから。来るときは必ずLINEして」
冴蘭は露骨に不快な表情を浮かべると、一瞬にしてその場から霧散した。
「ふうー、ダメだ。肉体に戻られてしまうと、もうリンクを辿ることはできないの。彼女を捉えたのはこれで3度目なんだけどさ、彼女の本性を突き止めるためには、まだもうちょっと時間が必要なようね……」
蛍はそう云うと、ボートの上にしゃがみこんだ。
「あ、あなたは誰ですか……? どうして私の名前を知ってるの?」
留依は不安気にそう尋ねた。蛍はニコリと笑うと「うん、それは実際に会ったときに詳しく話すわ。ときがくれば、あなたと私は肉体同士で会うことになるわ。それまでは私があなたの周囲を警護しておくわ。だから、今日はゆっくり眠っていいわよ」と云った。
「えっ、警護?」
「ではくれぐれも気をつけてね」
蛍はそう云うと、再び上空に浮上した。急上昇していくぽっちゃり体型の蛍がだんだんと小さくなっていく。留依は蛍を眼で追ったが、あっという間に見失ってしまった。
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