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気をつけてって云われても……一体、私はなにに気を付ければいいの?
次の瞬間、留依はベッドの上にいる自分に気づいた。脳髄の奥でガクンという音がした気がした。留依は夢から目覚めたのだ。
「なにこれ……。こんなリアルな夢を見たのは初めてだわ……。
ううん、幼い頃以来だわ。……驚いた……。なんなのこれって……」
夢の中と同様に留依の動悸は激しいままだった。
冴蘭? 來桜? そして空からやってきた蛍? 物凄くリアルだったけれど、とてもヘンな夢……。
とても混乱しているし、とても落ち着かない。
廃屋に行ったあの夜から私はおかしくなってしまった。やっぱり、遊び半分で、あんなところに行ってしまった私が悪いんだ。ああ……後悔先に立たず……でも、いまは重要な時期だ、なんとしてでもこの苦境を乗り越えて見せる。留依はそう自分に言い聞かせた。
それから蛍は暫く寝つけなかった。眠った瞬間に、またあの少女が出てきたらどうしよう? 私をどこかに連れていくって云っていたけど、冴蘭は私をどこに連れていきたいのだろう?
留依の脳内で不安が乱舞する。疲れているのに眠れないストレスに苛まれながら、留依はベッドのなかで苦悶した。
しかし、心労が重なった留依は、それでも思いのほか速やかに眠りに落ちていった。薄れゆく意識の中で留依は、蛍の囁きを聞いたような気がした。
「大丈夫。私がついているから……」
胡乱のなか、確かに蛍はそう囁きかけていた。
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