神秘なる山麓を超えて 2

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神秘なる山麓を超えて 2

「なにがあっても追跡を諦めてはいけない。まずは冴蘭の肉体の所在を確かめることだ。彼女がどこに住み、普段はなにをしているかを突きとめることだ。そして、その糸口が掴めたら、すぐに私に知らせてほしい。そこからは実働部隊を組織し、対処する」  それが今回、真壁から蛍に伝えられた言葉だった。  冴蘭が蛍の家を初めて訪れたあと、蛍は急いで高円寺にあるCoph Niaへと走った。そこには蛍の到着を待ちかねた真壁と伊達がいた。ジェディは開店後に訪れた客たちの対応で多忙なようだった。 「……蛍、一体なにがあったのだ? なぜおまえは少女の名前を知っているのだ?」  真壁は神妙にそう問いかけると、手元にあるビールをあおった。蛍は先ほど体験した一部始終を真壁と伊達に伝えた。 「問題は、冴蘭がどのようにして蛍の存在を知ったか、だな。蛍、本当にまったく面識のない少女だったのか?」 「間違いないですね。だって私、基本、引き籠りだから、アヌビスの人たちと母親以外は没交渉ですから。はい、彼女とは、まったくの初対面でしたよ」  真壁は蛍に少女の詳しい容姿を問い質した。蛍は覚えている限りの詳細を語った。
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