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「家族揃ってダイニングで楽しそうにご飯食べていたんだって」
正孝のその返答に鏡花が反応した。
「きゃは、なによそれ! 一家団欒のひとときを垣間見たっていうわけ? なんだか間の抜けた話ね。血みどろのお父さんとか、床を這いずり回る鬼の形相のお母さんとかはいなかったわけ? ははっ、なんだか笑っちゃうわね」
「うん、まあそうなんだけどさ。……でもそこはもとより廃屋なわけなんだからさ、本来は絶対にいないはずの人たちが、そこにいたっていうだけでも、かなりビックリするってもんだぜ」
「でも幽霊たちは、みんな楽しそうにしていたんでしょう?」
「まあね。最初、廃屋の奥から家族の話声が聞こえてきたらしいんだよね。それで一同ゾワッとしたらしいんだけど、一緒に行った友達が『あれは風の音だろう?』って云うわけ。でさ、小柴さんは勇気を振り絞って、ずんずんと奥まで入っていったらしいんだ。あっ、ちなみにこの小柴さんていう人、高校時代は結構ヤンチャしてた人なんだけどさ」
「うんうん」
「もちろん中は真っ暗なんだけどさ、やっぱり人の話し声が聞こえるらしいんだ。それで声のする方を懐中電灯で照らしたらしいのね。そしたらさ…………」
「そしたら?」
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