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僕たちの住んでいる町は竜の上にある。
竜はとても大きかったので、まるで山のようだ。
竜はずっと眠っているので、その上には町以外にもいろいろなものができていた。
翼幕にたまった水にはたくさんの魚が泳いでいて、毎日漁船が漁に出かける。
背中は険しい山脈のようでヤギの群れが住んでいる。
ある時大きな地震があった。
原因はどうやらロック鳥らしい。
ロック鳥のつがいが竜の鼻を洞窟と間違えて巣を作るために入ったようだ。
なぜなら、地震が起きたとき二羽のロック鳥が地平線の彼方まで吹き飛ばされるのを見た人がいるから。
またある時、僕たちの町に蛮族の王様がたくさんの兵隊を引き連れて現れた。
王様は隷属か死を選べという。
仕方ないので町長は皆を集めて話し合うためと称して、街に古くから伝わる角笛を吹いた。
その角笛の音色は遠く地の果てまで響き渡った。
そしてやってきたのは……竜の子供たちだった。
こんなに大きな竜だけにたくさんの子供がいて、その竜にも子供がいて、その竜にも子供がいて……世界中から集まった竜たちはあっという間に空を埋め尽くし、まるで急に夜になったみたいだった。
蛮族の王様は竜たちと勇敢に戦った。その兵隊たちも勇敢にたたかった。でも竜たちは戦わなかった。一匹も戦わなかった。
人間の作る武器では竜を傷つけることができないと知っていたから。
だから、蛮族の軍隊を隙間なく取り囲んで横になっただけだった。
やがて蛮族の王様が兵隊たち共々飢えて立ち上がることもできなくなったころ、町長は炊き出しを行って蛮族の王様と兵隊たちにたくさんの魚料理をふるまった。
蛮族たちは泣きながら久しぶりの食事にありつき、満腹になると挨拶をして去っていった。
彼らはそのあと他の土地を征服して回ったらしいけれど、僕たちの町には二度と手を出さなかった。
そんなことがあったけれど、僕たちの町の下のとても大きな竜は、ずっと眠ったままだった。
僕たちの住んでいる町はそんな竜の上にある。
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