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「ほのかぁ」
膝の上に、真っ赤な顔の海未ちゃん。
私の足に……いや、太ももに頭をグリグリさせ、ほのかぁ、とふにゃふにゃな顔をする海未ちゃんをどうしようかと考えながら、頭を撫でた。
ここ最近、カクテルにハマっていた海未ちゃん。仕事の接待で行ったお店で初めて飲んだ時、衝撃を受けたんだそうな。その時飲んでいたカシオレは、お酒というかジュースレベルでアルコール度数が少なかったらしく、その日は10杯以上飲んで、次の日頭を抱えて出勤して行った。
それでもあの時の味が忘れられない、とインターネットで作り方を調べ、私のいないうちに作ったみたい。どうやらお酒に激弱らしい海未ちゃんは、お店のより遥かにアルコールが入ったカシオレをかなり呑んでしまった。そしてふにゃふにゃになっている時に、私が帰ってきた、というわけだ。
今日に限って夜勤だった私は、とりあえず服を着替えようと海未ちゃんをソファの上に寝かせた。
「ふぇ、ほのか?」
とろんとした瞳とふわふわした声に、なにかがぐらつきそうになるが、ぐっと堪え、ちょっと待っててね、と頭を撫でる。
「ん……」
海未ちゃんのふにゃふにゃ笑顔を間近で見せられ、かなり傾き始めた。が、ここは海未ちゃんのため、と無理やり押さえつけることにする。
30秒ほどでバランスを取り戻した私は、海未ちゃんの部屋に入って服を取ってくることにした。
リビングの壁に付いている左側のドアを開けて、海未ちゃんの部屋に入る。ガチャッと扉を開けると、布団はぐちゃぐちゃで服は散らばっていた。海未ちゃんがこんな事するなんて珍しい、と思いながらも、服を漁り始めると、ここにはないはずのものがあった。
「……あれ、これって……」
私が無くしたと思っていたTシャツである。高校から使っていたので意外とお気に入りだったのだが、1ヶ月ぐらい前から行方不明になっていたのだ。
間違えて入っちゃってたのかな、と思ってイヤイヤと首を振った。私が無くしたと気づいた日、海未ちゃんに聞いたはずだ。もしかしてそっちに混じってない?と。その時、海未ちゃんはこう言った。
「いいえ、見ていませんが」
そっかぁ、と返すと、よほど寂しそうに見えたのか、海未ちゃんは今度新しいものを買ってくれると約束してくれた。というか、それを昨日買いに出かけたんだから。
明日改めて聞いておこうかな、ととりあえず私のものを回収して、海未ちゃんの服を適当に選ぶ。
「お風呂……はいいかな」
そう思ってパジャマを選ぶ事にした。パジャマが入っている段の引き出しを引いて、中を探る。すると、箪笥の奥の方に、ことりちゃんにもらったのであろう私が見たことのないものが出てきた。それも多数。
「わぁお……」
その中には、なかなかに際どいものがあったり、私の好みを完璧に考えて作られているものもあった。ここにはいない幼馴染に全力でグットサインを送りながら、私の好みであり、なおかつ普段の海未ちゃんなら着なそうなものをチョイスする。うーん、際どい。
「うわぁ、これなんか見えちゃうよ」
もはや隠す気は無いだろう、というようなものもあったが、今日はする気は無い。それに、海未ちゃんだって酔っている。そんな中でしちゃったら、ほら、ねぇ?
「ほのか……?」
海未ちゃんの声。条件反射で飛び上がって逃げてしまう。
海未ちゃんの大きな瞳が、瞬きをした。火照った顔でそんなことをされたら……という私のドキドキを、海未ちゃんはそんなこと気にも留めないように、私に近づいてきた。
「………」
「……う、海未ちゃ」
そう声に出してから気付いた。今まで私は、海未ちゃんの私物を漁っていたのだ。誰だって、自分のものを勝手に触られていたらいい気はしない。もちろん、それが恋人だったとしても。
やばい、怒られる。そう思って目をぎゅっと瞑った。
しかし。
振ってきたのは怒声ではなく、海未ちゃんの唇だった。
「んっ!?」
訳がわからない。怒られると思っていたのに愛を伝えられるなんて。
唇を離した海未ちゃんは、ふにゃりと笑って、こう言った。
「ほのか、えっち、してください」
「……へ」
お酒飲んでるからダメだ、とか、明日仕事だし、とか断る理由はたくさんあったと思う。でも、そんな思考は次の言葉で全て吹っ飛んでしまった。
「……それ」
「え、これ……?」
海未ちゃんが指差したのは、ことりちゃん作のパジャマだった。それも1番際どいやつ。
「着て、しませんか……?」
激レアな際どいパジャマ姿の海未ちゃんとえっちできるだなんて。
そう思いながら、目の前で服を脱ぎ始める海未ちゃんを見つめる。慣れた様子でシュルシュルと脱いで行く海未ちゃんは、最後のTシャツ一枚になるとチラッとこちらを見た。恥ずかしいんだなって直感で分かったから、見えないように後ろを向いた。ただ、後ろには鏡があるから、鏡ごしに海未ちゃんの生着替えを見ることができる。
高校の時見てただろって言われても、あの時とは違う、としか言えない。あの時は、こんな関係になってなかったから、裸なんて見ても見られてもなんとも思えなかったし。
そんなことを考えてるうちに、海未ちゃんがTシャツを脱ぎ始めた。ちらっと見える、形のいいおへそにドキッとするが、次の下着に目を奪われた。
私が選んだ水色。
大学2年の冬、付き合い始めた私たちは、まぁ、それなりにこういうこともしてたわけで。その時に、海未ちゃんに言われた。
「穂乃果、下着とか、穂乃果の好みで選んでくれませんか?」
次の日曜、海未ちゃんと一緒にランジェリーショップに向かった。海未ちゃん曰く、私はかなりの破廉恥だそうなので、そんなこと言うなら、とすっごいエッチなのを選んだ。紫のやつ。もちろん海未ちゃんは着るはずがない。渋々選んだのは水色のちょっとエッチなやつ。海未ちゃんはそういうのに疎いので、あからさまじゃないやつだったら普通に着てくれる。その予想通り、海未ちゃんは着てくれた。見せてはくれなかったけど。紫のやつよりこっちの方が似合うと思ったから、意外と嬉しかった。本音としては、私が選んだものをつけてくれてたから、なんだけど。
でも、海未ちゃんは水色の下着をなかなか着てこなかった。せっかく買ったのに、とずっと思ってた。なんでだろ、気に入ってないのかな、とか悶々としてた。
私たちの記念日、海未ちゃんは初めて水色の下着を着けてきた。ちょっと大人っぽい東京のレストランで夕飯を食べたあと、そういう雰囲気になって雪崩れ込んだホテルのベッドの上で。初めて見たその姿は、どうしようもなく扇情的で。その日のは、いつもより激しくしてしまったのは、言うまででもない。
さらに、その後に海未ちゃんに散々怒られたのも、言うまでもない。
「海未ちゃんは大事な日にそれを付けてくるんだ」
それの根拠を見つけるのには、時間がかからなかった。
それから2年間、私が水色の下着を見る日は多くなった。μ'sの集まりの時、ことりちゃんが旅立つ日、それと……えっちの時。
えっちの時、海未ちゃんは必ずと言っていいほどあの下着をつけている。きっと、今日は水色で……次する日も、水色なんだろう。
鏡の中の海未ちゃんは、ブラのホックに手をかけたところだった。あの服は肩と胸元が丸見えなので、下着は外してから着なければならない。下着を脱がせられないのは残念だけど……まぁ、あの服の海未ちゃんを見れるなら本望ということで。
ブラが外され、高校の時より少し膨らんだ果実がぷるんと揺れた。思わず声を出しそうになったけど、なんとか耐えた。耐えぬいた。
鏡越しでも見たいと、少し横に移動することにした。海未ちゃんは、少しだけ身動ぎしたけど、しばらくすると黙って脱ぎ始めた。
海未ちゃんの背中は、武道をやっているのにもかかわらず、女の子らしい柔らかな背中だ。海未ちゃんは背筋を優しくなぞると反応するので、その背中が大好きだったりする。
その先にあるはずの果実を見ようと、覗き込もうとして耐えた。そんなことしたら、見えていることがバレてしまう。お酒が入っているのにそこは気にするのだから本当に面倒くさい。
でも、そんなところも好きなのは、きっと惚れた弱みってやつだよね。
ついに海未ちゃんが、下着に手を出した。そのままするりと綺麗な長い脚を抜けて、ブラと一緒に畳まれた。
思わずその引き締まったお尻を凝視する。背中と同じように色白な形のいいそれは、触るのを嫌がるけどちゃんと感じることができる。本当に初めの、海未ちゃんがまだ何も分からなかった頃に、私がそうなるようにした。
しばらく触れてないから、あんまり嫌がらないであろう今のうちに触ってみようかな。いやでも、そういうのはちょっといけないような気がする。
なんて、意味もない計画を立てながら海未ちゃんを待つ。
海未ちゃんがパジャマに手を出した。1度広げると、少しだけ止まって、でもすぐに袖を通した。前開きタイプのパジャマだから、脱がせやすいよ、ってことりちゃんが言ってた気がする。
さすがに見続けるのはあれかな、と思ったので目を逸らすことにした。前に向き直ると、海未ちゃんのクローゼットがあった。
海未ちゃんは箪笥とクローゼット二つ使いらしい。パジャマなどの部屋の中だけで着たり、少しお高い外出用のもの、それとお着物は箪笥。普段着やコートなどのアウターはクローゼットに入れてるって言っていた。
ってことは、クローゼットはスッカスカなんだろうなぁ、なんてくだらないことを考えていると、背中に、酷く暖かい柔らかな感触が当たった。
「…………っ海未、ちゃん?」
「…はぁい」
紛れもなく、それは海未ちゃんの果実で。そこで思い出した。海未ちゃんは大学生になって第二次性徴期が来たのかって程色んなところが成長した。
対して私は、背は伸びたけれど胸は変わらず。海未ちゃんと同じくらいの背になれたのはいいものの、スタイルでは歴然の差が出てしまっていた。
「ほのか?こっちぃ、向いて?」
恐ろしく甘ったるい声と激レアであるタメ口で、私の中にあるものが爆発しそうになった気がしたけれど、もちろん抑えた。
「うん、わかって……」
るよ、そう言って振り向こうとした。けれど、思わず、途中で止まってしまった。
「ほの、か?どぅですか…?」
お酒の影響だけではないだろうけれど、火照った頬に、恥ずかしさを耐えている涙目、それだけでも十分に私の興奮材料になる。
………けれど、何よりも私を興奮させたのは。
「……うみ、ちゃ……下、どしたの」
下……つまり、ズボンを履いていなかった。思えばそう、下着を脱いだ時に疑問に思うべきだったのだ。パジャマを着るだけならば、下まで脱がなくてもいい。
「………こ、っちのほうが…ほのか、が、喜ぶかな、って……おもった、んです……」
本当に、この人は。
私を殺すつもりなのだろうか。
私は迷うことなく、海未ちゃんを押し倒した。
そして翌日、目覚めた海未ちゃんが腰を痛めていたことから、さすがに度が過ぎている、と怒られたのはご想像通りである。
でも、『よかった、から、いいです』なんて、赤面で言われたら、2回戦どころか4回戦ぐらいまで行っちゃうのは、私のせいじゃないよね?
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