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第1話 出会い
俺は、西田順。
人と関わるのが嫌いだった。
友達も作らずに、ただ、そこにいた。
大学も、そこそこの成績で受かり、自分の夢も見つからないまま2年目を迎えてしまっていた。
「おーい!そこの兄ちゃん!」
サークルの誘いだ。
俺は2年生だっつーの。
「なんだよ!俺、急いでいるんだけど?」
「うっそだー!君が、いつも暇しているの、僕が一番よく知ってるよ?西田順君」
「・・・なんだ、東條じゃん」
よくみたら、同じクラスの東條宏人だった。
「うっそ!名前、知っててくれたの?超うれしいんだけど」
「クラスの中でも、おまえが一番よくしゃべってるから嫌でも覚えたよ。しかも、一人で。」
「だってさー、しゃべっていなくちゃ楽しくないもん!っていうかさ~さすがに一人では、喋らないよ?僕だって、子供じゃないんだから。」
「悪いけど、うるさいだけだから。迷惑なんだよ」
「でもさー、クラスのみんなの名前は、ちゃんと覚えているよね。君はいつも、一人でいるのに。」
「気まぐれだよ。おまえは、目立つくらいうるさいし、明るすぎなんだよ」
「よく、言われるんだー!ありがとう、ほめてくれて」
「いや、誉めてないんだけど」
いまのどこが、誉め言葉に聞こえたんだよ
「人生明るく、楽しく生きなくちゃ!!ねぇ?そう思わない?」
「思わない」
思いたくなくなった。
「君はさー、いつも一人だし、たまには弾けたい!とか思わないの?
例えばー、いろんなサークルに、顔を出してみるとか?
自分で、作ってみるとか?」
「しないよ。というしさたくないの。俺は人と関わるのが嫌いだから。」
「なんで?」
「なんでって言われても・・・」
理由なんて・・・・
「なんのために大学に来たの?自分の夢を見つけるためとか、素敵な青春時代を作るため~!とか、それぞれみんな目的はあるのに。」
「ないやつだっているだろ?たまたま受けた大学が合格していたとか・・」
「たまたまなんだ。」
「別に、親に・・・」
「もしかして、よくあることだけど、親に認められたいから?」
「うるさいよ」
俺はそんな理由で大学に来たわけではない。
「とにかくさ、自分がこれだって思える夢がないなら・・・
一度くらいは覗いてよ」
と東城は、ある紙切れをくれた。
「ひまわり会・・・?」
「僕らのサークルの名前だよ。ほら、ひまわりって元気で明るいイメージがあるでしょう?」
「・・・気が向いたらな」
たぶん、向かないけど。
どうやら彼は、自分でサークルというものを、作ったみたいだ。
「期待してるよ、西田君。君とは友達になれそうだから・・・
ううん、友達になろうよ!せっかく四年も一緒・・・
あぁ・・あと二年か・・・一緒なんだしさ!仲良くしようよ」
そう言って、東條は、笑って俺の手を握り、ブンブン振った。
い、痛いんだけど・・・・。
「とにかく、今日は帰るよ。そんな気分じゃないし」
「ふーん・・・。でも、君はきっとくる」
「・・・・・・」
「明日が来るのと同じできっとくる。」
「・・・・どうかな」
「じゃあ、また明日ねー!」
そう言って、笑って手を振ると
次の人を勧誘していた。
「・・・お気楽なやつだな・・・っていうか・・・へんなやつ」
俺は、彼の背中を見ながらそう思った。
まさか彼とこんな形でこれからかかわることになるなんて考えてなかった。
そして、俺にとってかけがえのない大学生活になるなんて思ってもみなかった。
さっき、あいつに言おうとしたしたのは、親に認められたいとかじゃなくて、親に言われたから・・」
というのが正解、
まっ、どっちもどっちか・・・・
大学くらい出て、自分がやりたいことを見つけろと言われて入った大学だ。
有名な私立でも、頭がいい大学でもない。
見つけるまでは帰ってくるなっ言われた。
そう言われたから、一人暮らしもしているが、そんなに遠くでもないから、休日には家に帰っている。
一緒に遊ぶ仲間も、飲みに行く友達さえもいない。
それに、サークルというのにも入る気しないし、作る気もない。
いつから俺はそんな風になってしまったのだろう。
自分でもよくわからない。
気がついたら、人と関わるのが嫌いになっていたんだ。
きっとそれは、あいつのせいだ。
あいつの・・・
俺は一人、窓を開けて今思い出そうとしたことを忘れようとしていた。
ふとそのとき、東條が言ったことを思い出した。
「友達になろうよ。四年・・・さっきも言ったけど、二年も一緒なんだからさ!」
「なにが友達だよ!・・・友達なんて・・・」
俺をこんな風にしたのは・・・・
高校生になって、はじめて親友だと思っていたやつに俺の大切な彼女を奪われた・・・・。
そして・・自殺させたんだ。
少なくとも俺はそう思っている。
彼女の気持ちを踏みにじったのはあいつに違いない!
「ずっと一緒にいようね、順」
里子は、笑っていた。
そんな日々がずっとつづくはずだったのに・・・・
あるひ、彼女は手首を切って一人部屋で亡くなっていた。
俺は、どんなに驚き、そして泣いたか・・・・。
「思い出したくなかったのに・・・」
なぜか思い出してしまう。
忘れたくても、俺の記憶から消せない過去。
いや・・・一生消えない過去なんだ。
「友達なんて・・・人なんて・・・信じたくない・・・」
俺は、一人部屋でで泣いていた。
俺はきっと彼も、裏切ると思っていた。
だから、東條のことを、すぐに信じることができなかったんだ。
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