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The decisive battle is Saturday 2
ゆっくりリビングのドアを開けると、うちの両親が仲良くコーヒータイム。
朝食はとっくに済んでいるようだ。
伊吹は………居間にはいない。
「……おはよう」
「おっ、明希おはよう~!……眠そうな顔してるなぁ~(笑)」
「あんた珍しく早起きだったのね~、だから今日夕方から大雨予報なのかしら?
それより、このウインドブレーカー借りてもいい?日光東照宮までって結構歩くらしいのよ!折り畳み傘は持ったけどさ!」
「あぁ……いいよ」
それだけのために下まで来させたんか……さっきの電話で事足りるだろ……。
絶対うかれてんな、父さんとの1泊旅行。
「あんたの大きいからちょうどいいのよね~♪そうだ、コーヒー飲む?」
「………砂糖3杯、あとミルク」
「やだもう、本当糖尿病とかやめてよ~?うちの親戚、糖尿病多いんだから~。いい加減ブラック飲めるようになんなさい!」
「…るせーな、ほっといてくれ…💧」
“珍しく早起き”って、休みの日に息子はまだ寝てると予想が出来たら電話なんてかけてこねーよな、クソ。マイペースな母め。
広斗さんの隣の席に腰かけてみるも、あくびが止まらない。
ふと視線を感じ、横を見るとニコニコと俺を見る穏やかな笑顔。
昨日の今日で、何となく罪悪感でいっぱいな俺をよそにご機嫌な父さん。
……………???
「…父さんどうしたの?」
「いやぁ、明希は本当にママと瓜二つだなぁ。可愛いなぁ~、あー可愛い可愛い、俺の息子♪」
そう言うと俺の寝癖頭をわしゃわしゃと撫でてくる大きな両手。
大人の男性にこんな事をされたのは初めてで、一体どうしたらいいのかわからない……。
チラッと母さんの顔を見ると、俺たちを見ながら嬉しそうにコーヒーを注いでいる。
えーーと……。
「……い、犬じゃないんだから……」
こう返すのが精一杯。
正解か不正解かはわからない。
母さんも嬉しそうな事だし、とりあえず大人しく触られている事にする。
俺自身、これはなかなか悪くない……。
父親にこんな事、された経験がないからな…。
本当に良い人だ。
伊吹は、広斗さんのこういう明るい朗らかな所を受け継いだんだろうな。
──そういえば、居間にはいないけど…洗面か?トイレ?
それにしては長いし……まだ部屋?
キョロキョロと見回していると例の如くすかさず野次が入る。
「……なぁーに、伊吹ちゃん?まだ起きてきてないわよ。あんた本当わかりやすいわね~」
俺の目の前にカップを置いて、ニヤニヤしながら席に戻ってきたうちの母。
…ほっといてくれ…俺は昨日色々あったんだよ……。
「そだそだ、明希ぃ今日頼むなぁー。伊吹が親の居ぬまに友達んち外泊するとか言い出したらゲンコツしていいから(笑)」
つんつんと俺の肩をつつく父さん。
「えっ……!」
“お前、今日亜由子んち泊まりに行けば?用意やっとくし”って言おうとしてたのに…牽制されてしまった。
それならやはり、俺が秀一んち行くしかないか?
昨日の時点で“かまわないから来いよ”と承諾は得ている…。
「台所にクレジットカード置いてくから使っていいわよ!今日のご飯、外へ食べに行くなり買い出し行くなり…あっ、余計な物買って無駄遣いしたらダメだからね!」
「…小学生じゃねんだから…💧」
ハァ、困ったな。
あぁもう。とりあえずサッパリしたい。
シャワー浴びてこよ……。
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