起きてみたら…

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起きてみたら…

「うーん」  裕也は体が痛かった。やはり、小さなソファに寝るものではない。  ふとベッドに目をやるとまだ、彼女は寝ていた。  今日は土曜日。裕也は休みだ。  彼女はどうなんだろう。  朝の7時を回っている。起こすなら今だろう。  急いで着替えるとみやに大声で「起きろ!と声を掛けた。  みやはハッとしてガバッと起き上がった。そして、裕也の顔を見ている。 「す、すいません!私、失礼な事言ってましたよね?まさか、ベッドインしちゃいました?」  記憶力はいいんだな。 「まさか、してないよ」  裕也は首を、振った。 「酔っ払いを襲うほど落ちぶれていない。」 「今日っていつですか?」 「土曜日」 「良かった」  彼女も休みらしい。  話を切り出す。 「失恋って苦しいよな」 「そんな事言ってましたか?」 みやは、あちゃーと頭を抱えている。 「服脱がすわけ行かないし、スーツシワになってない?」  みやは、「安物ですから」と言って気にする様子はなかった。 「失礼だけど名前は?」  みやは、照れたようにしていたが酔いが覚めているのかキリッとした顔になった。 「沢口みやです」 「沢口さんね。昨日は散々、オジサン呼ばわりだったけど結構、若いのかな?」  みやは、ひゃー!と小さい悲鳴をあげるとおずおずと、「26歳です」 「社会人じゃない、俺は川口裕也38歳。結婚はしてないからオジサンはキツいな」  裕也は、冷蔵庫に向かうとサービスドリンクの水を2本だした。 「これでも飲んだら?二日酔いにはなっていないみたいだけどね」  みやは、水を受け取ると蓋を空けて飲んだ。冷たくて美味しい。  裕也も水を飲んだ。おもむろに腕時計を見ると9時前だった。 「暇だったら朝食付き合ってくれない?」  みやは、「はい」と答えた。 「吉野家どうかな?」  丁度、お腹が空いていたのでみやは、笑顔でうん。と答えていた。 「笑うと可愛いんだな。あ、暇あるならドライブも付き合ってよ」  ナンパ? 「いきなり、ドライブは嫌かな?失恋に効くよ」  ナンパではなさそうだ。 「メイク直しておいで。シャワーは、浴びる時間なさそうだから」  みやは、裕也に言われるがまま、メイクを直した。  裕也が精算を済ますと、みやは「払いますよ」と言った。裕也は「女性には払わせられない」と財布を胸ポケットにしまった。 「ありがとうございます」というとみやは、頭を下げた。 「銀行行っていい?持ち金あんまりないから」  みやは、多少なら持ってます。といったが、女の子からもらう気はない。とキッパリとさえぎられた。  吉野家の隣がみずほ銀行だった。 「ちょっと待ってて」裕也はサッと身をひるがえすと銀行へ消えた。  みやは、春のうららかな天気に気持ちよさを感じていた。 「気持ちいい〜」  軽く伸びをした。  しばらくして裕也が出てきた。 「じゃ、行くか」  裕也は迷う事なく吉野家に入っていく。みやも急いで後を追って店内に入っていった。  2階の1番奥に座った。 「いらっしゃいませ、お決まりになりましたらベルでお知らせ下さい」  店員は、水とおしぼりを置くとレジ奥へと消えた。 「なんでもいいから頼みなよ」  裕也に言われてみやは、メニューを見た。大好きなネギの牛丼と豚汁がいいと裕也に言った。裕也は、メニューを見る事なくベルを押した。 「ご注文は?」  裕也はこれとこれと…と言いながらメニューを指差した。 「承りました。少々、お待ち下さい」  定員が行くと同時にみやを見ながら言った。「仕事は何やってるの?」  みやは、「ただの事務員です」と答えた。 「そのバッチは中浦だね。俺もそうだよ」裕也は、バッチをぐいっと持ち上げるようにみやに見せた。 「俺は営業。まさか、同じ会社だとはね」  株式会社中浦は、一応、有名な会社であった。 「そういえばさ、住まいは実家だったりするの?」 「いいえ、一人暮らしです」 「良かった。嫁入り前の娘が帰ってこなかったら大騒ぎだもんな」  お待たせしました。と、牛丼たちがやってきた。 「食べようぜ。いただきます!」  裕也は嬉しそうに箸を進めていく。 「いただきます」  みやは、手を合わせると箸を取り、ネギを牛丼の上に乗せ、卵も乗せた。 「みやちゃんはさ、立ち飲み屋よく行くの?」 「毎日…」 「毎日なん?酒好き?」 「はい、一杯だけですよ。そんなに呑みません」  ミヤは、恥ずかそうに言った。 「俺は、初めてだったんだよな。いつもは居酒屋なんだけどさ、会社のやつがあそこはいいって言うから行ってみたんだ。そしたら、危なそうな君にあったんだよ」 「オーラ出まくりでしたか??」 「出まくりだったよ。怖かったもん」 「川口さん、感がいいんですね」 「なんでだろうか。すぐにわかるんだよな」  裕也は紅生姜を入れながら答えた。 「失恋はさっさと切り替えて楽しく行こうぜ!あ、みやちゃんはさ芋好き?」  嫌いじゃないです。と答えると裕也はにこやかに「川越行こう」と言った。
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