裕也は男らしいやつ

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裕也は男らしいやつ

 裕也との一夜を思い出していた。  11時から2時頃までみやは、裕也に気持ちいいセックスとやらを教え込まれていた。  思い出すだけでとろけそうだ。  仕事に身が入らない。 「みやちゃん、お昼だよ」 「え?もう、そんな時間!」  パソコンの画面は真っ白だ。  今日は、残業だ。  お弁当は今日もなかった。  日曜日も裕也と一緒だったから。 「紗江ちゃん、食堂行く」 「珍しいね」 「うん、月曜日はお弁当無しなんだ」 「ふーん」  紗江はニヤニヤしている。 「いい事あったでしょ?」 「え?そんなんじゃないよ汗」 「いいけどさ」 「食堂行ってくる」 「私も行くよ」  紗江と一緒に食堂へ急いだ。 「ひゃー、後1時間くらいは残業かな」  裕也との事はひとまず頭からよけていた。  残業してやっと仕事を終わらせたのは7時半だった。  ロッカールームへ行くとスマホを出した。  残業かな?終わったらLINEして。  裕也からだった。  すぐにLINEした。  今終わりました。  すぐに返事が来た。  また、裏口に来て。  すぐ行きます。  みやは、足早にロッカールームを出た。  裏口に向かうと青いスポーツカーが止まっていた。裕也だ。  裕也は気付いたのかライトを付けた。急いで助手席に座った。 「今日も会えるなんて思わなかった」 「毎日会いたいからな」 「やだぁ、嬉しい」 「俺がよく行く居酒屋でいい?」 「うん」  車は裏通りを走っていった。  こじんまりとして、男性なら行くような店だ。 「誰も知らないんだよな。ここうまいよ」  裕也の後を追うようにみやは歩いた。すると、腕を出してきた。 「裕也さん」  抱きつくように腕を掴んだ。  ガラガラと古風な音を立てて扉を裕也は開けた。 「いらっしゃいませ。あら」 「いらっしゃい。カウンター空いてるぜ」  店主さんはファンキーだった。  リーゼント。 「彼女さん?初めてじゃないの連れてきたの?」  看板娘さんかな?可愛い人。 「親父さんに紹介したくってさ」 「沢口みやです。初めまして」 「みやちゃんね、可愛いじゃない」 「よろしくな、みやちゃん」 「おやじさんはミッキー、アルバイトのかおりんだよ」  裕也が紹介してくれた。 「何でも出来るぜ。食べたいの頼んでよ」  ミッキーは何でもござれと言わんばかりだ。 「あじの開きとおでん下さい」 「おでん盛り合わせでいいのか?」 「はい」 「あじは、今から焼くから待ってな。 飲み物は?」 「ビールを」 「中?大?」 「大で」 「俺も」  裕也が言った。 「おでんの盛り合わせ追加」 「あいよ」  あれ?車なのに裕也さん飲むんだ。  裕也は、ミッキーに鍵を渡した。 「明日よろしく」 「あいよ」 「ここは、車預かってくれるんだ」  店が終わると運転してマンションまで持ってきてくれるみたいだ。 「近いお客さんだけのサービスなんだよ」  裕也が言った。  ビールが運ばれてきた。かおりんはニコニコしている。 「とうとう結婚するんだ」 「は?結婚って何?ええ!」  みやは、かおりんの言葉に驚いた。 「来年にとは思ってるよ」  裕也さん、一体何を言っているの?? 「みやちゃん、可愛いししっかりしてそうだよね。幾つ?」 「26歳です」 「若ーい、裕ちゃんと一回り違うんだね」 「やるじゃないか裕さん」  ははは。と裕也は笑った。 「ビール乾杯しようか」  カチンとジョッキを合わせた。 「マジだからな」  裕也は、みやの目を真剣に見ている。 「裕也さん…」 「今日は客いないしみんなで乾杯するか」  ミッキーとかおりんは、小さいグラスにビールを注いで高めに持ち上げた。 「乾杯!」  みんなで高くジョッキとグラスを上げた。すると、みんなでビールを飲んだ。 「特別うまい酒だな」 「そうだね、ミッキー」  ミッキーとかおりんは本当に嬉しそうにしている。  私が結婚!?大丈夫かな。 「毎日、愛してやるよ」  耳元で囁かれた。 「うん」  恥ずかしかったけどあの気持ち良さを思い出すと嬉しかった。 「あじの開きとおでんの盛り合わせ」  おいしそうだ。みやは、ヨダレが垂れないかと口をつぐんだ。 「みやちゃん、お肌綺麗だからドレス似合うだろうね」  ドレスか。想像しちゃう。 「裕さんは背高いからタキシード似合いそうよね」 「式場は後で決めような」  ゼクシィの宣伝が頭をよぎった。  結婚が決まったらゼクシィ。  ワンフレーズが飛び込んできた。 「裕さんとなら、幸せ確定だな」 「裕さんはでも、嫉妬深いのが難点よね」 「好きな女には仕方ないだろ」 「ミッキーも嫉妬深いもんね」 「バカ!ウチのことはいいんだよ」  今日の夕飯は何よりも美味しかった。 「車よろしく」 「あいよ」  裕也は立ち上がるとそのまま出入り口に歩いていく。 「また、来てよな」 「また来てね」  みやは、頭を下げて裕也と一緒に出ていった。 「お金払わないの?」 「月末に払うんだよ」 「つけってやつだね」  裕也はテクテク歩き出した。 「泊めてくれる?」  見たことのある風景に出た。何だ、ウチの近くだったんだ。 「同じスーツでいいの?」 「そんな事気にするのか?」 「言われない?どうしたの。とか」 「彼女の家に泊まったと言えばいい」  潔い。  コンビニへ行くと必要なものを買い、みやのアパートへ行った。
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