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STORY1◆爆誕!魔王少女レオン!◆
【1】
ハラハラと桜の花びらが舞う、そんな春の陽気が麗しくも心地良い朝、陽向麗音はお気に入りのランドセルを背負うと「行ってきまぁーす!」と元気に玄関のドアを開けた。
「麗音? 待って、提出するプリントを忘れてるわよ?」
優しそうな女性の声に呼び止められた麗音は小さな身体をピクンと反応させ声のした方へ向き直る。その際、真っ赤なランドセルにぶら下がったクマのキーホルダーと防犯ブザーが小さく揺れた。
片眼に眼帯をした黒い翼の生えたクマのキャラクターは決して可愛いとは言い難いが、陽向麗音のお気に入りである。去年のゆるキャラグランプリでは惜しくも予選落ちだったようだが。
「元気なのはいい事だけど、今日から三年生なんだから忘れ物も減らさないと駄目よ麗音?」
「は、はやく学校に行きたくて、ついつい。えへへ、ありがとうっママ!」
麗音は優しく微笑む母にお返しとばかりに飛びっきりの笑顔を炸裂させ舌を出しては照れくさそうに頬を紅潮させる。
「お友達とは仲良くね?」
「うん、わかってる。ケンカは駄目、いつも笑顔で仲良く、だよね?」
「偉いわ麗音。その笑顔は皆んなを幸せにする力を持ってるわ。あ、ほら桜ちゃんと舞ちゃんが迎えに来てくれてるわよ?」
「あ、本当だっ! さくらちゃん、まいちゃん、おはようっ!」
手を振ると頭のお団子もぴょこんと揺れる。まるでクマの耳のような二つのお団子は、いつも母に結ってもらっている。
謂わば陽向麗音のチャームポイントでもある。
「「おはよー、れおんちゃんっ!」」
そしてこちらも負けじと眩しい笑顔。桜と舞、彼女達は麗音の一番仲の良い友達だ。
新年度を迎え小学三年生となった麗音。今日は待ちに待った始業式の日。仲良しの桜、舞と共に何気ない会話をしながらの通学路には桜並木が続いている。その先に見えるのが彼女達の通う小学校だ。
歩いて十分程の距離で、小学三年生の足でもそう遠くない距離である。
「桜の花びらがキレイだね〜!」と、舞が頭に乗った花びらを手に取る。
「本当だ、さくらちゃんみたい!」
「もう、おせじはやめてよ〜、れおんちゃん〜」
桜は頬を紅潮させては、まんざらでもない表情を浮かべている。今日日の女子小学生は結構ませているもので、ランドセルに忍ばせた『月刊三年生』にはオシャレコーデからメイク、男の子の気を引く仕草の特集等が掲載されている。因みに今月は自然なあひる口特集だ。
正直、男子より女子の方が数段大人になるのが早い。男子からすれば、アヒルだのカモだの、何でもいいのだろうけど。
「担任のセンセーは誰になるのかな?」
桜の言葉に麗音が答える。
「大山センセなら良いね、さ、く、ら、ちゃん!」
「はうぁっ……もう〜!」
桜は顔を真っ赤にしてしまった。そんな彼女に追い打ちをかけるように舞も参戦。
「さくらちゃん、大山センセーのことが好きなんだよね〜、イケメンだし、細マッチョだし、照り焼きだし、悪くないと思うよ〜!」
「照り焼きじゃないもん……そ、そんなんじゃない……わけじゃないけど……じ、上腕二頭筋にぶら下がりたいとか、大胸筋をコショコショしたいなんて、考えたことないんだからね?」
「か、考えてたんだね。センセにたのんでみれば?」と、麗音が苦笑いをする隣で、
「だいきょーきんって何?」と、舞がキョトンと首を傾げてみせる。
何はともあれ、笑い声の絶えない通学路。
まさかこの後、あんな事が起きるなんて誰も想像だにしなかった。
いや、出来る訳がなかった。
「ふぇ? 何か出てきたよ?」
——まさか、突如として現れた魔方陣に、
「あわわわっ!? 何なにナニ〜!?」
「「れおんちゃんっ!!」」
——吸い込まれてしまうなんて、
「あーーれーー!?」
「「れおんちゃぁーーん!!」」
——誰が想像出来ただろうか?
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