渡米

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これ以上絡まれたくないから、さっさと立ち去る。ついてきてそうな勢いだから早足で。 「ミナキ!待って!ご飯食べに行きましょ?」 「ミナキ、疲れたでしょ?」 「えー!離してよ!」 お姉さん達に捕まったようだ。とりあえず助かった。 が、それからミナキと会うたび 「フミ~!フミ~!」 と呼ばれるのであった。 「迷惑になるから静かに」 「じゃあ仕事終わったらデートしてくれる?」 「なんでそうなるわけ?」 メイクされてる人は複雑な顔をしてる。申し訳ない。 「ミナキー!化粧直しお願い」 女優さんに呼ばれたら飛んでいく。なんてやつ。やっぱりからかってるじゃないの。 そんなお直しをするミナキを覗いてみたら…真剣だった。指が長くて、とても器用。こいつ私より上手い…。ま、私はアートって感じだけどね。モデルは本当にしてるのかな? ミナキは私の視線を気にせず、仕事に集中する。私も仕事しなくちゃ。 「フミは最近入ったのにうまいね」 先輩メイクさんが指導にやってきたのだが、褒められた。 「ありがとうございます。まだまだ勉強中ですよ」 なんて言う私、偉そうかな? 「ふーん、フミは器用なんだね」 ひょっこり現れたのはミナキだった。 「ちょっと仕事中なんだけど。邪魔」 「見てるだけでもだめなの?」 悲しそうな目で見てくる。俳優さんも困ってる。 「フミ、ミナキが興味を持ってるんだから見せてやりなよ」 「でも…集中できないです。うるさいから」 「フミのこと…」 「ちょっと、何を言う気?」 ぱっとミナキの口を手で塞いた。悲しそうな顔をして見ている…お前は子犬かなんかなの? 「フミ、ミナキをいじめるなよ~?同じ仕事してる仲じゃないか」 「そうじゃないんです!」 仕方なく手をはなした途端叫ぶ。 「好き!」 だから言わんこっちゃない!バカなの?こいつ。 「…ミナキ、本当なのか?」 あーあ、先輩気にしちゃって。 「もちろん!フミのこと大好きだよ!」 「ちょっとやめて、困る!」 「なんでなんでー?」 「あなたを好きな人なんてたくさんいるじゃない!女優さんと噂もあるんでしょうが」
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