99人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
小学時代
そんな孤独な幼少期を余儀なくされていたことが原因だと思うが、小学校に入学した当時、俺は他の子どもに馴染めなかった。
俺の友だちになってくれたのはクラスで一番頭のいいフミヤと、頭が空っぽのケイスケの二人だけだ。中学を卒業するまで、俺の友だちは彼らだけだった。だがフミヤとケイスケは友だちではなかった。俺は常に、どちらかと二人だけで行動した。
フミヤは好奇心旺盛で、学校帰り、いろいろ寄り道をした。川の浅いところの石を裏返して川虫を探し、それを草で縛り魚を釣る。山に行き、太い木のほこらに棒を突っ込み蛇を誘い出す。高い木にロープを括り付けターザンのように神社の屋根まで飛び移る。
猫や犬の死骸を発見すると人目につかない場所へ隠し、毎日どんな風に変化するか観察することも彼は好きだった。ウジ虫が湧き、チリチリと音を立て肉を食い荒らし、少しづつ骨が露出していく悍ましい死後の変遷を俺たちは何度も見た。
ケイスケの家は山の上の農家だった。遊びに行くとケイスケの父親は
「好きな鶏を絞めろ!後で肉にして持たせてやるから。」
と言った。俺たちは放し飼いになっている鶏を追いかけたが、まるで捕まえられなかった。鶏はキケンを感じると空高く飛んで逃げた。急斜面を利用すると数十メートルも飛べるように見えた。もらった卵を家でフライパンに割ったら、口ばしや目玉ができて鳥になりかけていたりした。
ケイスケは走るのは誰より速かった。短距離でも長距離でも、獣のような勢いで跳ぶように走った。俺は彼と友だちだったお陰で、彼の次に速く走れた。
俺は幼少期の長い間、家に封じ込められていた反動で、小学時代は毎日、暗くなるまで野山を駆け巡り、擦り傷・切り傷が絶えない危険な遊びに夢中だった。
同級生のほとんどが、野球少年団、サッカー少年団などのスポーツに打ち込んでいる時間、俺は自由に野山を駆け巡っていた訳だが、良くも悪くも今の俺は、その経験の積み重ねで出来上がっている。
最初のコメントを投稿しよう!