今の暮らし

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今の暮らし

 医院の裏に実家はある。渡り廊下でつながっているので外を通らずとも実家へは行き来できる。そこには今は院長である母が一人で住んでいる。    俺は医院から車で15分位の場所にある、元の兄の家に住んでいる。兄が亡くなった後、兄嫁と子どもたちは、札幌の兄嫁の実家に転居した。  俺は元の兄の家に、父の弟である叔父と二人で暮らしている。叔父は確か母と同じ67歳で自動車整備士をしている。古い外車の部品はなかなか手に入らないらしいが、叔父は似ている部品を加工して組み合わせ、とにかく快適に車が動くようにする腕は超一流らしく、遠い町からも客が来るらしかった。ネットで見たと、わざわざ九州から北海道まで車を直しにくる客までいるという。  その叔父が、家の掃除や洗濯など全部してくれるので俺は快適だ。食事はそれぞれということに決めてあるが、冷蔵庫に入っているものは、お互い自由に食べてよいことにしてある。  俺は買い物が嫌いなので、叔父に毎月50,000円渡している。トイレットペーパーとか洗剤等の消耗品や食費の足しになればと思ってのこと。  俺は朝はプロテインとコーヒーだけで職場へ向かい、夜明け近くまで職場に居て、家に戻ったらシャワーして寝て起きて、すぐ職場に向かうので、家には寝に帰るだけだ。 「どうせ遅くまで仕事してるんだからココに泊まって行きなさい」 と母は毎日のように言う。実家には、もともとの自分の部屋もベッドもそのままあるので、年に数回は泊まることもあるが、できるだけ泊まりたくない。その一番の理由は、安らげないからだ。
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