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「右に曲がったら、着物を着ている胡散臭そうな男がいるから話してみるといい。あれでも一応有能でね」
しゃがんでいた姿勢からのそりと立ち上がって、つり目の人が遠くを指さしたのは十分程前のことだ。
白く細長い人差し指の方向を二人で見てみるが、身長がまだまだ小さい彼らにはいくら背を伸ばしても、人の往来が激しいため、この先の道は見えなかった。
「大丈夫。曲がるとこは一本しかないからさ。迷いはしないよ」
ぴょんぴょんと跳ねてなんとか先を見ようとする佑太と鈴に、つり目の人が笑いながら声をかけた。少し残念そうにしていたので、宥めるようにふわりと二人の頭を軽く撫でる。
「ああ、えっと……それで……ボクとお嬢ちゃんに謝らないといけないことがあって……」
頭を撫で終わった手をゆっくりと下げたかと思うと言いづらそうにごにょごにょと後半を濁らす。
「道案内が出来ればよかったんだけど……ちょっと用事があって……」
「一緒に行けないってことですか?」
なんと言おうか悩んでいたところにすかさず佑太が不安気に聞いてきた。鈴も「そうなの?」と心配そうに眉間に僅かな皺を寄せた。
「うっ……。そうなんだよ。ほんとにすまない」
真っ直ぐな言葉と視線に、思わず詰まってしまった。子供というのは純粋故に残酷だ。
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