虹色の記憶

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津波の後、オットウは 大船主のところで一生懸命働いて 小さな自分の舟を また持つことができました。 津波のことは みんな、あまり話さないようになりました。 オットウもオッカアも 私もいれて5人も子供がいたんですから 悲しんでばかりもいられなかった。 でも 夜中にフト目が覚めて ざああん、ざああんと波の音ばかり 冴えて聞こえるような晩は 真っ赤なほっぺたを潮風にさらして 小さな指で貝殻を拾っては ニコニコしながら私についてきた よちよち歩きのユイのこと 私の頭を撫でてくれた ババさまの手の温かったことを 思い出すのでした。 言わないけど 家族みんな、同じだったと思います さて、もっと時が経って 私が10歳の頃 津波から5年たっていました。 ある春の晩でした。 私は夜中に またパッチリ目が覚めてしまったんです。
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