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なんで、俺がお前を助けなければならないのか、訳がわからない。俺の方が助けてもらいたいくらいだ。
いや、いやまて、これは良い機会ではないのか。あの泥棒女を捕まえて警察に突き出せば、金が幾らかでも戻ってくるかもしれない。
俺が女へ向き直ると、女を押さえつけている男と目が合ってしまった。いつか何処かで見たことのある顔だ。奴が着ている派手な服には見覚えがある。えーっと――たしか、俺が今向かっているコンビニの制服ではなかったか……。
俺はさり気なく、ごくさり気な~く通りすがりの他人を装いながら、(実際赤の他人だし)あくまでもさり気なく二人に近づくと、コンビニ店員に向け快活に声を掛けた。
「おつかれさまです~。この女、何かしでかしたんですか~」
顔見知りの店員は訝しげな顔で俺に答えた。
「万引きですよ! こいつ、このあたりでは有名な万引き常習者なんだ! お客さんの知り合い?」
見ると、女はしっかり二人分のコンビニ弁当と五百ミリリットルペットのお茶を手にしていた。店員は俺の顔を、しっかり覚えているらしい……。
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