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気を取り直して考える。
あの小汚い女は俺に懐いているように見える。もしかして、モテない金ない根性ない三拍子揃った俺に、こんな機会は一生に一度しか訪れないのかもしれない。するともしや、何のスキルも持たずこの世に生まれ落ちた哀れな子羊である俺に、神様が慈悲を掛けて下さったのではあるまいか。あの女は、神の奇跡なのではないのか? 小汚いけど。
そう考えると、女を警察に届けるのは少々勿体無くも思えてくる。折角だし、警察に届けるまでの間、ほんの少しの間だけでも、世間一般に言われるところの『リア充』なるものを体験させてもらっても罰は当たらないのではないだろうか。そんな仄かな希望と、ささやかなる欲望が頭をもたげる。
けれど、けれどもだ。金がないのだ。頑張ってバイトしなくては、このままでは俺が生活できなくなってしまう。ホームレスになってしまうではないか。
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