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五
大家さんに誤解された俺は、顔の前で手を全速力で左右に振っていた。
「違うんですって! 拾っただけなんですから!」
「成る程ねぇ。女を拾ったなんて、あんた女をそうとう泣かせてるクチだね」
俺はもう泣き顔である。
「だから、違いますよぉ!」
「あんたも男なんだからしかたないさ。それより、ちょっとおいで」
出っ張ったお腹の頂点に向け話し掛けている俺の耳を引っ張って、大家さんは、表へと連れ出した。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえって言うけど。あんたはうちの大事な店子だから忠告しておくよ、あの子に本気になっちゃあ火傷するよ」
相変わらず誤解は解けないまま、突然の核心的展開に戸惑う俺は、大家さんに聞き返すよりほかに術はなかった。
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