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 大家さんに誤解された俺は、顔の前で手を全速力で左右に振っていた。 「違うんですって! 拾っただけなんですから!」 「成る程ねぇ。女を拾ったなんて、あんた女をそうとう泣かせてるクチだね」  俺はもう泣き顔である。 「だから、違いますよぉ!」 「あんたも男なんだからしかたないさ。それより、ちょっとおいで」  出っ張ったお腹の頂点に向け話し掛けている俺の耳を引っ張って、大家さんは、表へと連れ出した。 「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえって言うけど。あんたはうちの大事な店子(たなこ)だから忠告しておくよ、あの子に本気になっちゃあ火傷するよ」  相変わらず誤解は解けないまま、突然の核心的展開に戸惑う俺は、大家さんに聞き返すよりほかに(すべ)はなかった。
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