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念の為俺は、脱ぎ捨てたオリーブドラブのカーゴパンツをまさぐり、昨日バイト代が入ったばかりの財布を確かめてみる。
「やられた……」
財布は見事にすっからかんだ。ご丁寧に小銭まで無くなっていた。
俺は甘かった。人は善意に対し、善意で応えるものだと骨の髄まで思い込んでいた。それで何度騙され、馬鹿にされてきたことか。そんな俺だが、他人の所為などとは思っていない。他人が悪いなんてことはわかってる。都合の良い人間を作る教育が悪いなんて正論は聞き飽きた。
そんなこと皆わかってる。わかっていても、変えられないのが俺なのだ。
さて、こんな予定調和の述懐などしていても空腹は収まらない。
俺はこんなときの為にへそくっていた秘密の貯金箱から、なけなしの金三千円余りを引っ張り出した。
別にちゃっかりしている訳でも、しっかりしている訳でもないのだ、『小銭を貯めるのが好き』という貧乏人特有の妙な~習性なのである。こんな窮地に陥ったときの非常手段であるとか、緊急避難であるとか、いわゆる生命力の強さというものであろう。
例え人類文明が崩壊したとしても、ゴキブリと貧乏人だけは逞しく生き延び、繁栄するに違いない。
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