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正社員に、私はなる!
まず、ヘルプデスク業務に就く前になる。
一年前の私は、焦っていた。
アルバイトで接客経験のみ。
でも、この先も独身で、安定した収入を得ながら生活をしていくためには、やはり正社員が最も有力な選択肢だった。
ここにいたい――
この思いも強かった。
上京して十年数年。
年齢は三十を軽く超えた。
地元に戻るという選択肢もあった。
歌手になる夢に破れ、ただただダラダラと東の都に住み続けているわけにはいかない。
応援してくれた母も、「そろそろいいんじゃない?」と苦笑する。
待っていてくれている人が、迎えてくれる人がきちんと地元にいる幸福。
そろそろ、いっか……
と、正直思ってもいた。
でも、こういう時いつも擡げてくる疑問。
本当にそれがいいの?
その自問に、いつも私はノーを出すのだ。
心にいつも従ってしまうのは、悪い癖だと自分でも分かっている。
それでいつも失敗してきているではないか。
東京に残るか……実家に戻るか……
そうして頭から煙が出るほど考えた挙句、いろいろな安定を常に突っぱねて選択する。
ここにいたい。
私は東京で、正社員になることに決めた。
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