電話恐怖症

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電話恐怖症

 電話が嫌いだ。  かけるのも、かけられるのも、嫌い。  まず、音が嫌い。どんな音になっていても、ダメ。  顔が見えないことが怖い。顔見知りでも、恐怖。  自分の時間を遮られることが嫌。ただのワガママ。  電話が鳴った瞬間。  えっ⁉  鳴った⁉ 鳴ってるんですけど⁉  えっと、えぇ、と! 最初なんて言うんだっけ⁉  最後、どうやって終わればいいんだ⁉  いや、それよりどんなお問い合わせ⁉  答えなければ! 対応しなければ……!  笑顔よ! 笑顔ぉ!  電話の向こうにいる方はお客様! お客様で何もしてこない!  顔が見えないだけ……顔がぁ……  顔の見えない人への対応が、こわいよぉー!  電話、大嫌いだぁーーーー!  と、二、三コールの間に考えを巡らせ、取る。  毎回。  そう、毎回だ。  そんな私が、ヘルプデスク業務をメインとした職場に決まったのは、十か月ほど前のことだった――
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