命の選択

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翌日、軽く朝食を済ませて、僕は紫乃を車で市立病院に連れて行った。 産婦人科で精密検査をした結果は、あまり良くない診断だった。 医師から子宮がんであると診断を受けたのである。 すでに来月出産を控えている紫乃は、堕胎することは母子ともにリスクが高くてできず、だからといって抗がん剤の投与は分娩のリスクが高まるとされるため、治療は断念せざるおえない状況だった。 医師の話では、母子ともにリスクが高い状態で出産し、出産後すぐにがん摘出手術をするしかないということだった。 紫乃はさっそく入院することになり、紫乃と僕は病院内の食堂で昼食を済ませて、その後一旦自宅に帰って入院の準備をしてから再び病院に入った。 紫乃と僕は、不安な気持ちでいっぱいで、あまり言葉を交わすことができなかった。 この日は、できるだけ病室で紫乃と一緒の時間を過ごしてから僕は帰宅した。 自宅では、コンビニで買った弁当を食べたが、いつも紫乃と一緒に夕食の時間を過ごしていた僕にとって、1人で食べる夕食がこんなに寂しいものなのかと痛感した。 予定日の12月20日を過ぎて12月24日のクリスマスイブの日、会社に勤めていた僕のスマートフォンに紫乃から産気づいたと電話連絡が入った。 僕は、会社の上司に事情を話して、会社を早退して病院に向かった。 病室での紫乃は、陣痛促進剤の点滴を投与しているとのことだった。 夕方になると陣痛の間隔が短くなってきて、いよいよ出産という段階になった。 紫乃が分娩室に入るとき僕は、 「心配いらないよ!  一緒に赤ちゃんの顔を見ようね!」 と優しく声をかけた。 紫乃は少し笑顔になって、分娩室に入っていった。 当初分娩室には僕も入る予定だったが、今回は帝王切開になるため入室はできなかった。 僕は、分娩室の外の廊下にある長椅子に座って、紫乃の出産を待つことにした。
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