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「もし、貴方が神様なら、紫乃と赤ちゃんの命を救ってください。」
確かに僕は、神の存在を信じていなかったけれど、今は誰かにすがりたい気持ちでいっぱいだった。
僕は、この状況が理解できないまま、素直な気持ちを女の子にぶつけた。
「今のままだと2人とも死ぬ運命なの…
私ができることは、どちらかの命を助けること!
残念ながら、神といえども万能ではないのよ!」
今の僕には、とても選択なんてできないと思った。
「無理だ!
どちらかを選ぶなんて、僕にはできない。」
女の子は、沈黙したまま僕に選択を迫っているようだった。
僕は、こんな時紫乃はどう言うだろうかと考えた。
紫乃は、僕との間にできた赤ちゃんが産まれることを心から喜んでいた。
紫乃の子宮がんが発覚した時、僕は紫乃が言っていたことを思い出していた。
「虹輝、せめて赤ちゃんの命が助かってくれると私は嬉しいけどね!」
僕の心の中では、紫乃との思い出が蘇っていて、僕は選択ができない状態が続いていた。
「時間がないわ!
このままだと2人とも死んでしまう!」
僕は、究極の決断を下すことにした。
「赤ちゃんを助けてください。」
「わかったわ!」
女の子は、返事をすると霧のようになって窓の外に消えていった。
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