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ここは墓地。
それも夜の墓地。
明かりは空を照らす白い月だけ。
「やべぇ、マジ怖い」
青白い顔をさらに青くしながら、河野はぼそりとつぶやいた。
せめて懐中電灯の一本でもあれば、とは俺も思う。
だが、それは叶わぬ願いだ。
「今更引き返せるもんか」
田口は鼻息荒くそう言った。
だが、その目は微かに泳いでいる。
怖くないはずが無かった。何しろ夜の墓地なのだから。
俺だってそうだ。真夜中にこんなところにいるのは滅茶苦茶怖い。
だって墓地だ。月明かりに浮かぶ無数の墓石のシルエットが醸し出す迫力は尋常じゃない。
おまけに静かだし、真っ暗だし。
「明るい繁華街に戻りたいなぁ」
河野はすでに半泣きだ。
こいつの怖がりは筋金入りだ。
聞いたところによれば、学生時代にはチキンと罵られ、出荷に向けた加工の名のもとに素っ裸に向かれたりしたこともあるらしい。
「ダメだ。三人で決めただろ。今日はここで肝試しを妨害するんだよ」
田口の声も震えているが、強がってるだけまだマシか。
「そうだぞ、大体お前が仕入れてきたネタじゃないか。リア充どもが、この墓場で肝試しと言う名の女の子とくっつきたいだけイベントをやるって」
「そうだけどさぁ……」
俺の言葉に河野は痛いところを突かれたと言わんばかりだ。
口答えこそしなくなったが、目線ととんがらせた唇が完全に不満の様子を表している。
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