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三人編制の小部隊であった。先頭を歩くのは、漆黒の甲冑に身を包んだ潜行者であった。左腰に大剣を吊るし、腰の後ろに球形の物体を六個ほどぶらさげている。兜の面頬は油断なくおろされており、性別も表情もわからなかった。
黒騎士の後に続くのは、赤色の甲冑を装着した潜行者であった。左腰に大小の刀を差し、背中に小弓を背負っている。黒騎士同様、面頬をおろしているので、赤騎士の表情をうかがうことは難しかった。
部隊の殿(しんがり)を任されているのは、甲殻類を思わせる甲冑を装備した男であった。右手に戦鎚、左手に盾を持っていた。腰に複数の皮袋をさげ、背中に大きな背負い袋を負っていた。
頭に兜を被り、眼の周りをゴーグルで保護していた。年齢は二十代後半か、三十代前半ぐらいか。したたかで、しぶとそうな面構えをしている。最盛期の永井豪がデザインを手がけたかのような凄味と迫力を有していた。
重武装、重装備にも関わらず、三騎士の足取りは驚くほど軽く、そして滑らかであった。余程に「もぐり慣れ」したメンバーであるらしい。
迷路内は一定の明るさが保たれている。天井、壁、床…迷路を構成する素材そのものが、光を放ち、照明の役割を果たしているからである。ある潜行者が壁面の一部を削り取り、首都大学の研究室に分析を依頼したが、素材の正体は謎のままであった。
他の天体から持ち込まれたものだとか、超古代文明の産物だとか、様々な憶測が唱えられたが、仮説は仮説に過ぎなかった。存在するものは存在するものとして受け入れるしかなかった。
もっとも、潜行者側としては、照明器具の用意が省けるので、不満を述べる者はいなかった。但し、路内には全てを闇黒に塗り潰された「ダークゾーン」と呼ばれる危険地帯もあった。視野を閉ざされたところに怪物群が襲来し、壊滅的被害を被った部隊も何組かいた。
前方に数体の魔影を認めた黒騎士は、腰の大剣を抜き放つと、殺戮の旋風と化して、敵中に猛然と斬り込んでいた。怪物は【邪見羅】と呼称される種族であった。黒騎士の剣が、邪見羅Aの頭部を断ち割っていた。黒騎士が剣を引き抜くと、脳漿と血潮が凄い勢いで噴き出した。断末魔の絶叫が、路内に反響した。
黒騎士は引き抜いた剣を、即座に真横に払った。邪見羅Bの肉体が、上と下に両断されていた。綺麗な断面から、血の波濤が溢れ出し、大量の臓物が床にぶちまけられた。
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