おりてこない

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

おりてこない

「ちょっと二階に行ってくる。」 息子が呟いた。 「もうすぐ夕飯なんだけど、用事はすぐ終わるの?」 私は少し不満そうに返した。 息子は、 「やりたい事がある、しばらくおりてこないから。」 と呟くように返事をし、少し早足で自室のある二階へと消えていった。 「呼んだらすぐ降りてくるのよー!」 かすかに返事が聞こえた気がした。 それからというもの、 何十分、何時間と息子はなかなか降りてはこなかった。 いつまで自室にいるつもりだ、しびれを切らした私は、 「いつまでこもってんの!夕飯冷めるから早く降りて来なさい!!」 と大口開いて叫ぶように呼びかけたが、返事はなかった。 仕方なく、息子がいる二階へと足を動かした。 結局息子は、 わたしがおろすまでおりてはこなかった。 かすかに「ごめん」と息子の声が聞こえた気がした。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!